徳島県立中央病院看護局では、理念である「質の高い看護」を目指し日々努力をしていますが、看護の質を検証するためには、日常的に行っている看護を可視化する必要があります。そのために、ナーシング・インディケーター(看護指標)の作成に取り組みました。
ただし、ナーシング・インディケーターについては、まだまだ項目・内容ともに不十分ですが、今後も、アベディス・ドナベディアンモデルの質評価の仕組みであるストラクチャー(構造)・プロセス(過程)・アウトカム(結果)を基に指標を充実させて看護の質向上に活かしていきたいと思います。
医療の高度化に伴い、看護職に求められるニーズも高くなり、チーム医療の推進など看護職の役割、機能も大きく変わりました。高度な医療に対応した人材育成、臨床看護実践能力の基礎となる看護教育のあり方は重要です。
大学 | 短期大学 | 専門学校(3年課程) | 進学コース(2年課程) | 高校衛生看護専攻科 | |
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人数(人) | 49 | 27 | 283 | 102 | 21 |
構成割合(%) | 10.2 | 5.6 | 58.7 | 21.1 | 4.4 |
看護職養成機関は看護大学系、看護系短期大学、看護専門学校、衛生看護専攻などがあり、当院でも様々な養成機関の卒業生が就職しています。(なお、正規職員には准看護師はいません)
看護職員が修めた教育について評価することは、看護の質の評価指標の一つと考えます。
看護系大学が増加し、大卒者構成割合が、少しずつではありますが増えてきています。
高齢化や医療技術の進歩に伴う環境の中で、安全で安心した医療を提供するためには、人材の確保を図りながら看護職が健康で安心して働ける環境を整備することが必要です。
多様な勤務形態の導入、院内保育所の整備など、働き続けられる職場への改善に力をいれ離職の防止に努める等、看護職員の確保定着対策が、従来にもまして非常に重要となっています。
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
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平均職員数(人) | 437 | 445 | 445 | 449 | 457 |
退職者数(人) | 21 | 9 | 20 | 12 | 10 |
離職率(%) | 4.8 | 2 | 4.5 | 2.7 | 2.2 |
全国平均離職率(%) | 10.9 | 10.7 | 11.5 | 10.6 |
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
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新卒採用者数(人) | 15 | 13 | 15 | 17 | 24 |
退職者数(人) | 1 | 0 | 1 | 1 | 5 |
新卒者離職率(%) | 6.6 | 0 | 6.6 | 5.9 | 20.8 |
全国平均離職率(%) | 7.5 | 7.8 | 8.6 | 8.2 |
*常勤看護職員離職率には、新卒者の離職も含まれる
*離職には定年退職、転職を含む
当院は「働きがいのある職場、自慢できる・誇れる病院」を目指し魅力的な病院づくりを心がけて参りました。昨年度は、残念ながら十分な情報提供ができませんでしたが、今年度は感染対策をとりながら、当院の働く環境や教育体制についてPRできる機会を持ちたいと思います。
今後も、看護職員が長く働き続けられるように、子育て支援はもちろんのこと、労働条件や職場改善、職場づくりに努めて参ります。
参考文献
1)日本看護協会出版会編集:平成25年版度看護白書(日本看護協会調査による看護職員の離職率)
2)NewsRelease公益社団法人日本看護協会広報部2021年3月26日
当院では、「認定看護師」「専門看護師」といった各専門分野におけるスペシャリストの育成に力を入れており、その資格取得のためのサポートも行っています。現在、2領域3名の専門看護師および12領域17名の認定看護師が組織横断的に院内での活動を行っており、院外に於いても研修会の講師等で活動しています。
本会専門看護師認定審査に合格し、ある特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を有することを認められた者をいいます。
専門看護師制度は、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び団体に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保険医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかることを目的としています。
専門看護師は、専門看護分野において以下の6つの役割を果します。
本会認定看護師認定審査に合格し、ある特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有することが認められた者をいいます。
認定看護師制度は、特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い認定看護師を社会に送り出すことにより、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上をはかることを目的としています。
認定看護師は特定の看護分野において、以下の3つの役割を果たします。
日本看護協会ホームページより
領域 | 人数 | 特定行為取得者 |
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がん看護専門看護師 | 2名 | |
老人看護専門看護師 | 1名 | |
救急看護認定看護師 | 2名 | 1名 |
皮膚・排泄ケア認定看護師 | 2名 | |
集中ケア認定看護師 | 2名 | 1名 |
小児救急認定看護師 | 1名 | |
感染管理認定看護師 | 1名 | |
緩和ケア認定看護師 | 2名 | |
摂食・嚥下障害看護認定看護師 | 2名 | |
手術看護認定看護師 | 1名 | 1名 |
糖尿病看護認定看護師 | 2名 | |
精神科認定看護師 | 1名 | |
がん放射線療法看護認定看護師 | 1名 | |
がん化学療法看護認定看護師 | 1名 | |
慢性心不全看護認定看護師 | 1名 | |
認定看護管理者 | 2名 |
当院には、上記2領域3名の専門看護師、12領域19名の認定看護師と認定看護管理者が2名がいます。今年度も新たに認定看護師が誕生する予定です。今後とも、領域・人数共に増員をはかっていきたいと考えています。
認定看護師、専門看護師は、リンクナースなどの仲間とともに、各分野の役割モデルとして活動しています。また、エキスパートナース会などにより連携を図り、エキスパートナース便りの発行や、勉強会の開催、コンサルテーション等を通じ、看護の質向上に努めています。連携病院からのコンサルテーションや講義の依頼も、お待ちしています。
今後も、多様な患者や家族のニードに対応できるように、患者サービスの向上に努めて参ります。
当院では、職員の資質向上・新しい知見習得のため学会や院外の研修会への参加を積極的に支援しています。コロナ禍のため、県外への出張が困難な時もありますが、オンライン研修も活用しながら自己研鑽に努めています。
2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
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研修会(人) | 359 | 325 | 218 | 362 | 181 | 94 |
学会(人) | 35 | 30 | 38 | 69 | 5 | 19 |
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
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発表者数(人) | 4 | 10 | 42 | 4 | 7 |
当院は、教育研修病院として毎年多数の看護学生の臨地実習を受け入れています。コロナの影響で臨地実習が一部中止になりましたが、オンラインで学生カンファレンスにも参加し、教育研修病院としての役割が果たせるよう努めています。また、院外より看護職の研修もお受けすることで職員にも良い刺激となり、共に学ばせていただいています。
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
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看護学生臨地実習受入数(のべ人数) | 5,789 | 5,698 | 5,888 | 4059 | 2933 |
看護職(保健師・助産師・看護師)の院外からの研修受入数(のべ人数) | 3 | 3 | 0 | 20 | 20 |
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年 | |
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精神科を除く | 0.04 | 0.03 | 0.035 | 0.04 |
精神科のみ | 0.1 | 0.04 | 0.075 | 0.05 |
褥瘡の深さの判定基準には日本褥瘡学会DESIGN-R(2008年改訂版褥瘡経過評価表)を用いる
褥瘡発生率算出方法:一般社団法人日本病院会QIプロジェクト
分子:調査期間における分母対象患者のうち、d2以上の褥瘡の院内新規発生患者数
2021年度は昨年と同様に褥瘡転帰における死亡退院が17件と横ばいで、その半数の8件がターミナル期に伴う呼吸、循環動態悪化に伴う褥瘡発生でした。褥瘡発生部位では踵部褥瘡が20件と最も多く、発生要因としては、全身状態に伴う効果的な除圧不可な状況、低栄養、浮腫・病的骨突出に伴う局所的圧迫の影響がありました。
d1を含む褥瘡発生総数では91件→65件と減少しましたが、d1報告は22件(昨年比-21件)と大幅に減少しています。d2は38件(昨年比-1件)、D3以上の褥瘡発生は5件(昨年比-2件)で横ばいです。精神科では、d2以上の褥瘡発生が2件(昨年比-4件)で発生率は低下しました。
2021年度は看護師及び看護助手におけるオムツマイスター取得の推進を行ない、排泄ケアの質の向上を行ないました。来年度においては、排泄ケアが病棟にて実践できているかを確認すると伴に、ターミナル期における褥瘡予防強化に取り組む予定です。
DESIGN-R評価においてDは深さを意味しd1は持続する発赤、d2は真皮までの損傷を意味する。
入院中には、ベッド周辺、歩行途中、トイレの行き帰りなど思いもしないところで転倒・転落があります。
医療安全センターでは、転倒・転落のインシデント・アクシデントの報告を受け、その減少に努めております。
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
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インシデント | 302 | 338 | 365 | 332 | 291 |
アクシデント | 9 | 4 | 9 | 6 | 10 |
入院患者の転倒・転落発生率(インシデント・アクシデントレポートが報告された件数)
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
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インシデント | 2.62 | 2.78 | 3.08 | 3.1 | 2.97 |
アクシデント | 0.08 | 0.03 | 0.08 | 0.06 | 0.1 |
入院患者の治療・処置を必要とした転倒・転落発生率(インシデント・アクシデントレポートが報告され治療や処置を必要とした件数)
入院患者は高齢者が多く、入院による急激な環境の変化や治療などによる身体機能の低下、認知症などによる認知機能の低下も重なり、転倒や転落の発生のリスクは高くなります。転倒・転落スコアを使用し、危険を未然に防ぐ対策を検討し実施していますが、残念ながら転倒や転落をゼロにすることは難しい現状です。万が一、転倒や転落が起きても重症な外傷につながらない対策を行いながら安全管理に努めています。
今後、転倒・転落スコアによる危険予知対策に加え、不必要な持続点滴や留置カテーテルの削減や工夫を行い、早期離床をすすめていきます。そして、患者さんが安全で安楽な入院生活を送り、入院前の生活の場へ帰っていただけるよう取り組んで参ります。
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
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院外検出数(人) | 78 | 84 | 83 | 68 | 54 |
院内検出数(人) | 58 | 56 | 45 | 66 | 42 |
新規MRSA発生率 | 0.50 | 0.46 | 0.34 | 0.56 | 0.37 |
MRSAは、手などを介した接触により感染が拡がります。MRSAの発生状況を監視することにより感染予防策の評価を行うことができます。
2015年度より、同じ菌かを見分ける分子疫学的解析の方法(POT法)を導入しています。早期介入により、院内伝播経路と感染源を早期に特定することに努めています。
今後も感染予防の強化を職員全体で取り組み、さらなるMRSA検出率の低下を目指します。
漏出件数(件) | 化学療法件数(件) | 漏出率(‰) | |
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2017年度 | 6 | 4,077 | 1.4 |
2018年度 | 5 | 4,408 | 1.1 |
2019年度 | 2 | 4,526 | 0.4 |
2020年度 | 5 | 4,895 | 1.0 |
2021年度 | 6 | 5,506 | 1.1 |
血管外漏出率(‰)=抗がん剤の血管外漏出件数/外来におけるがん化学療法件数×1000
年々外来でがん薬物療法を受ける患者さんが増えています。
血管外漏出とは投与中の抗がん剤が血管外に、薬液が周囲の組織へ広がることをいいます。
外来薬物療法室では、血管外漏出を防ぐために採血後の上肢を避け、弾力がありできるだけまっすぐな血管を選んで点滴をするようにしています。
抗がん剤を繰り返し受けている方は、血管が細く、もろくなっているため血管外漏出が起こりやすくなります。
そのため、点滴中の観察はもとより、確実な止血を心がけています。また万が一、血管外漏出が起きた場合でも早期に発見できるように患者様にも情報提供や点滴中のルート管理にご協力
を求め、早急に対応するようにしています。