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「看護」関連

徳島県立中央病院看護局では、理念である「質の高い看護」を目指し日々努力をしていますが、看護の質を検証するためには、日常的に行っている看護を可視化する必要があります。そのために、ナーシング・インディケーター(看護指標)の作成に取り組みました。
ただし、ナーシング・インディケーターについては、まだまだ項目・内容ともに不十分ですが、今後も、アベディス・ドナベディアンモデルの質評価の仕組みであるストラクチャー(構造)・プロセス(過程)・アウトカム(結果)を基に指標を充実させて看護の質向上に活かしていきたいと思います。

1.看護職員の背景

看護職員の教育歴

医療の高度化に伴い、看護職に求められるニーズも高くなり、チーム医療の推進など看護職の役割、機能も大きく変わりました。高度な医療に対応した人材育成、臨床看護実践能力の基礎となる看護教育のあり方は重要です。

看護基礎教育背景の構成割合(正規職員)
2024年4月時点
総数:506人
大学 短期大学 専門学校 (3年課程) 進学コース (2年課程) 高校衛生看護 専攻科
人数(人) 61 26 283 118 23
構成割合(%) 12.0 5.1 55.9 23.3 4.5
看護基礎教育背景構成割合

コメント

看護職養成機関は看護大学系、看護系短期大学、看護専門学校、衛生看護専攻などがあり、当院でも様々な養成機関の卒業生が就職しています。(なお、正規職員には准看護師はいません)
看護職員が修めた教育について評価することは、看護の質の評価指標の一つと考えます。
看護系大学が増加し、大卒者構成割合が、少しずつではありますが増えてきています。

看護職の離職率

高齢化や医療技術の進歩に伴う環境の中で、安全で安心した医療を提供するためには、人材の確保を図りながら看護職が健康で安心して働ける環境を整備することが必要です。
多様な勤務形態の導入、院内保育所の整備など、働き続けられる職場への改善に力をいれ離職の防止に努める等、看護職員の確保定着対策が、従来にもまして非常に重要となっています。

常勤看護職員離職率(新卒看護職員離職者を含む)
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
平均職員数(人) 445 445 449 457 488 496
退職者数(人) 9 20 12 10 10 7
離職率(%) 2 4.5 2.7 2.2 2 1.4
全国平均離職率(%) 10.7 11.5 10.6 11.6 11.8
新卒看護職員離職率
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
新卒採用者数(人) 13 15 17 24 23 20
退職者数(人) 0 1 1 5 2 0
新卒者離職率(%) 0 6.6 5.9 20.8 8.7 0
全国平均離職率(%) 7.8 8.6 8.2 10.3 10.2
常勤看護職員離職率(新卒看護職員離職者を含む)
新卒看護職員離職率

離職率の算出方法

  • 常勤看護職員離職率:年間の総退職者数が平均職員数に占める割合 常勤看護職員離職率=当該年度の総退職者数/当該年度の平均職員数×100 平均職員数=(年度当初の在籍職員数+年度末の在籍職員数)/2

*常勤看護職員離職率には、新卒者の離職も含まれる
*離職には定年退職、転職を含む

コメント

当院は「働きがいのある職場、自慢できる・誇れる病院」を目指し魅力的な病院づくりを心がけて参りました。昨年度は、残念ながら十分な情報提供ができませんでしたが、今年度は感染対策をとりながら、当院の働く環境や教育体制についてPRできる機会を持ちたいと思います。

離職防止の取り組み

  1. 新人看護職員の離職防止のために、きめ細やかな新人教育プログラムや各々の個性に合わせたプリセプターやディパートナーなどによるOJTをすすめています。
  2. 育児中も安心して働き続けられるように、院内やまもも保育園にて、夜間保育に加え、病児保育の制度もあります。
  3. 育児休業中の看護職員には、オンデマンド研修の受講や職場復帰のための情報提供、復帰前の個別面談や研修を行い、復帰がスムーズに行えるよう配慮するなど、働きやすい職場づくりを進めています。
  4. ライフサイクルに合わせたキャリアアップが行えるよう支援しています。
  5. 年休取得の推進や超過勤務削減についても、業務改善を行いながら、積極的に取り組んでいます。
  6. 定年後もプラチナナースとして経験やスキルを活かして働き続けられる職場を目指します。

今後も、看護職員が長く働き続けられるように、子育て支援はもちろんのこと、労働条件や職場改善、職場づくりに努めて参ります。

【参考文献】
1)日本看護協会出版会編集:平成25年版度看護白書(日本看護協会調査による看護職員の離職率)
2)NewsRelease公益社団法人日本看護協会広報部2024年3月29

看護スペシャリスト数

当院では、「認定看護師」「専門看護師」といった各専門分野におけるスペシャリストの育成に力を入れており、その資格取得のためのサポートも行っています。
現在、2領域3名の専門看護師および12領域17名の認定看護師が組織横断的に院内での活動を行っており、院外に於いても研修会の講師等で活動しています。

専門看護師(CertifiedNurseSpecialist)とは

本会専門看護師認定審査に合格し、ある特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を有することを認められた者をいいます。

制度の目的

専門看護師制度は、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び団体に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保険医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかることを目的としています。

役割

専門看護師は、専門看護分野において以下の6つの役割を果します。

  • 個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する。(実践)
  • 看護者を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う。(相談)
  • 必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う。(調整)
  • 個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる。(倫理調整)
  • 看護者に対しケアを向上させるために教育的役割を果す。(教育)
  • 専門知識及び技術の向上並びに開発をはかるために実践の場における研究活動を行う。(研究)

認定看護師(Certified Nurse)とは

本会認定看護師認定審査に合格し、ある特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有することが認められた者をいいます。

制度の目的

認定看護師制度は、特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い認定看護師を社会に送り出すことにより、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上をはかることを目的としています。

役割

認定看護師は特定の看護分野において、以下の3つの役割を果たします。

  • 個人、家族及び集団に対して、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践する。(実践)
  • 看護実践を通して看護職に対し指導を行う。(指導)
  • 看護職に対しコンサルテーションを行う。(相談)

日本看護協会ホームページより

認定看護師・認定看護管理者
2024年度4月現在
領域 人数 特定行為取得者
がん看護専門看護師 2名
老人看護専門看護師 1名
救急看護認定看護師 1名
クリティカルケア認定看護師 2名 2名
皮膚・排泄ケア認定看護師 2名
小児救急看護認定看護師 1名
感染管理認定看護師 1名
緩和ケア認定看護師 2名
摂食・嚥下障害看護認定看護師 2名
手術看護認定看護師 2名 1名
糖尿病看護認定看護師 3名
認知症看護認定看護師 1名
がん放射線療法看護認定看護師 1名
がん薬物療法看護認定看護師 2名 1名
慢性呼吸器疾患看護認定看護師 1名 1名
慢性心不全看護認定看護師 1名
在宅ケア認定看護師 1名 1名
認定看護管理者 3名

コメント

 当院には、上記2領域3名の専門看護師、15領域23名の認定看護師と認定看護管理者が3名がいます。今年度も新たに認定看護師が誕生する予定です。今後とも、領域・人数共に増員をはかっていきたいと考えています。
認定看護師、専門看護師は、リンクナースなどの仲間とともに、各分野の役割モデルとして活動しています。また、エキスパートナース会などにより連携を図り、エキスパートナース便りの発行や、勉強会の開催、コンサルテーション等を通じ、看護の質向上に努めています。連携病院からのコンサルテーションや講義の依頼も、お待ちしています。
今後も、多様な患者や家族のニードに対応できるように、患者サービスの向上に努めて参ります。

2.教育・研修等

学会、研修会等参加者数(出張分のみ)

当院では、職員の資質向上・新しい知見習得のため学会や院外の研修会への参加を積極的に支援しています。学会や研修会への参加数も、オンライン研修を活用しながら少しずつコロナ禍以前に戻りつつあります。

学会・研修会の参加人数
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
研修会(人) 218 362 181 94 175 193
学会(人) 38 69 5 19 27 54
学会・研修会の参加人数
施設外看護研究発表者数
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
発表者数(人) 10 42 4 7 10 11

実習受け入れ状況

 当院は、教育研修病院として毎年多数の看護学生の臨地実習を受け入れています。コロナの影響で臨地実習が一部中止になりましたが、コロナ禍以前の受け入れ数に戻りつつあります。これからも感染対策を行いながら、教育研修病院としての役割が果たせるよう努めてまいります。また、院外より看護職の研修もお受けすることで職員にも良い刺激となり、共に学ばせていただいています。

実習受け入れ状況
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
看護学生臨地実習受入数(のべ人数) 5,698 5,888 4,059 2,933 4,939 5,397
看護職(保健師・助産師・看護師)の院外からの研修受入数(のべ人数) 3 0 20 20 20 54

3.褥瘡発生率推移

褥瘡新規発生率
単位:%
2021年 2022年 2023年
精神科を除く 0.04 0.06 0.06
精神科のみ 0.05 0.04 0.07
褥瘡新規発生率

用語の定義

褥瘡の深さの判定基準には日本褥瘡学会DESIGN-R(2008年改訂版褥瘡経過評価表)を用いる
褥瘡発生率算出方法:一般社団法人日本病院会QIプロジェクト


分子:調査期間における分母対象患者のうち、d2以上の褥瘡の院内新規発生患者数

包含)院内で新規発生の褥瘡(入院時刻より24時間経過後の褥瘡の発見または記録)
深さd2以上の褥瘡、深さ判定不能な褥瘡(DU)、深部組織損傷疑い(DTI)
除外:医療関連圧機器圧迫創傷(MDRPU)

コメント

2023年度の褥瘡発生件数(発赤を含む)は76件で、昨年度よりも6件減少しましたが、d1報告は11件(昨年比ー11件)、d2は56件(前年比+5件)でd1からの発生報告が減少し、d2からの発生報告が増加しています。D3以上の深い褥瘡発生は5件(昨年比-5件)で減少し,心筋梗塞等の循環・呼吸状態悪化により効果的な体位変換が実施できない等の理由から、DTIの発生が5件ありましたが、深い褥瘡へ移行することなく、d2までの浅い褥瘡にとどまりました。褥瘡転帰は死亡退院によるものが17件(前年比+7件)で増加しました。
発生部位は、昨年同様に仙骨部及び尾骨部での褥瘡発生が30件と最も多く、加齢や低栄養にう皮膚組織耐久性低下、痩せによる病的骨突出、筋力低下に伴う局所的な圧迫による影響がありました。医療関連機器圧迫創傷の発生件数が26件→22 件で昨年とほぼ同数の発生状況でした。
2023年度は、オムツマイスター育成を実施し、70名弱のマイスターを育成しました。今年度においても引き続きオムツマイスター取得推進に取り組む予定です。また、d1からの褥瘡発生報告の推奨強化と、クリティカルケア領域における褥瘡発生予防が課題と考えています。

DESIGN-R評価においてDは深さを意味しd1は持続する発赤、d2は真皮までの損傷を意味する。

4.転倒・転落インシデント件数と発生率及び治療を必要とした転倒・転落件数と発生率

入院中には、ベッド周辺、歩行途中、トイレの行き帰りなど思いもしないところで転倒・転落があります。
医療安全センターでは、転倒・転落のインシデント・アクシデントの報告を受け、その減少に努めております。

転倒転落インシデント・アクシデント報告件数

報告件数
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
インシデント 338 365 332 291 289 311
アクシデント 4 9 6 10 9 18
報告件数

入院患者の転倒・転落発生率(インシデント・アクシデントレポートが報告された件数)

指標の計算方法

  • 転倒・転落発生率(‰)入院患者の転倒・転落件数/延べ入院患者数×1000

転倒転落インシデント・アクシデント発生率

発生率
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
インシデント 2.78 3.08 3.1 2.97 2.91 2.6
アクシデント 0.03 0.08 0.06 0.1 0.09 0.17
転倒転落インシデント・アクシデント発生率

入院患者の治療・処置を必要とした転倒・転落発生率(インシデント・アクシデントレポートが報告され治療や処置を必要とした件数)

指標の計算方法

  • 治療・処置を必要とした転倒・転落発生率(‰)入院患者の治療・処置を必要とした転倒・転落件数/延べ入院患者数×1000

コメント

入院患者は高齢者が多く、入院による急激な環境の変化や治療などによる身体機能の低下、認知症などによる認知機能の低下も重なり、転倒や転落の発生のリスクは高くなります。
転倒・転落スコアを使用し、危険を未然に防ぐ対策を検討し実施していますが、残念ながら転倒や転落をゼロにすることは難しい現状です。
万が一、転倒や転落が起きても重症な外傷につながらない対策を行いながら安全管理に努めています。
今後、転倒・転落スコアによる危険予知対策に加え、不必要な持続点滴や留置カテーテルの削減や工夫を行い、早期離床をすすめていきます。
そして、患者さんが安全で安楽な入院生活を送り、入院前の生活の場へ帰っていただけるよう取り組んで参ります。

5.入院患者の新規MRSA発生率(2018年度~2023年度まで)

発生率
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
院外検出数(人) 84 83 67 54 73 70
院内検出数(人) 56 45 66 42 54 46
新規MRSA発生率 0.46 0.34 0.56 0.39 0.48 0.46
入院患者新規MRSA発生率
  • MRSAメチシリン耐性黄色ブドウ球菌

コメント

 MRSAは、手などを介した接触により感染が拡がります。MRSAの発生状況を監視することにより感染予防策の評価を行うことができます。
2015年度より、同じ菌かを見分ける分子疫学的解析の方法(POT法)を導入しています。早期介入により、院内伝播経路と感染源を早期に特定することに努めています。
今後も感染予防の強化を職員全体で取り組み、さらなるMRSA検出率の低下を目指します。

6.抗がん剤の血管外漏出率

血管外漏出の件数と漏出率
漏出件数(件) 化学療法件数(件) 漏出率(‰)
2018年度 5 4,408 1.1
2019年度 2 4,526 0.4
2020年度 5 4,895 1.0
2021年度 6 5,506 1.1
2022年度 14 5,651 2.5
2023年度 9 5,376 1.6

血管外漏出率(‰)= 抗がん剤の血管外漏出件数/外来におけるがん化学療法件数×1000

コメント

年々外来でがん薬物療法を受ける患者さんが増えています。
血管外漏出とは投与中の抗がん剤が血管外に、薬液が周囲の組織へ広がることをいいます。
外来薬物療法室では、血管外漏出を防ぐために採血後の上肢を避け、弾力がありできるだけまっすぐな血管を選んで点滴をするようにしています。
抗がん剤を繰り返し受けている方は、血管が細く、もろくなっているため血管外漏出が起こりやすくなります。
そのため、点滴中の観察はもとより、確実な止血を心がけています。また万が一、血管外漏出が起きた場合でも早期に発見できるように患者様にも情報提供や点滴中のルート管理にご協力を求め、早急に対応するようにしています。