当科では、消化管全域(食道から大腸まで)および肝胆膵と全般にわたり診療(診断と治療)に当たっています。とりわけ救急疾患(消化管出血や胆石発作など)および癌の診断と治療に対して力を注いでいます。
外来は毎日、それぞれ2名の医師が診療にあたっています。外来受診は待ち時間短縮のためにも、かかりつけの先生方からの紹介状(かかりつけの先生からFAXでの予約ができます)をご持参のうえで来院されることをお勧めします。
病棟診療は、内視鏡および消化器病の専門医が指導医として、担当医師と連携し診断や治療にあたり、さらに研修医の指導も行っております。
当科での内視鏡総件数は現在年間約5000件であり、以下のごとく各種内視鏡下の 特殊検査や治療を行っております。
上部(食道、胃、十二指腸の一部)、下部(大腸)内視鏡検査は従来の白色光での検査に加え、特殊光(NBIやBLI)を用いた拡大内視鏡検査も施行しております。特殊光検査は癌の早期発見や後で述べますESD(内視鏡粘膜下層剥離術)前の精密検査(範囲および進達度診断)において非常に有用であります。
小腸からの出血性病変や腫瘍に対する検査として、当科ではダブルバルーン内視鏡も施行しております。これまで目の届かなかった小腸深部により侵襲の少ない検査としてとても期待されています。また、新病院になってからは、カプセル内視鏡による検査も導入しております。カプセル内視鏡は文字通り、カプセルの形をしたチューブのない内視鏡で、お薬のように飲み込むだけでよいため患者さんの負担も少なく、現在では主に小腸の病気が疑われる場合の検査として使用されています。
内視鏡で目の届かない消化管粘膜の下の腫脹や、胆嚢、膵などにある病変に対し、内視鏡先端に装着されている超音波装置を用いて、消化管より超音波検査(EUS)を施行しています。
病理組織が必要な病変には、超音波内視鏡で病変を確認しつつ組織採取(EUSーFNA)を施行しています。
胆道、膵臓の良悪性疾患に対し、内視鏡的逆行性胆管膵管造営検査(ERCP)、管腔内超音波検査(IDUS)による画像診断、ならびに病変からの生検、細胞診の検査を行っています。
当院では年間約500件のERCPならびに関連手技(後述)を行っています。
肝腫瘍性病変に対し、ソナゾイドを用いた造影超音波検査(造影US)を行っています。
通常断層像(Bモード)で描出困難な病変も造影USを行うことにより、抽出することが可能であり、存在診断・質的診断に有用です。また肝癌局所治療(後述)においても必須の検査法で、当院では年間約300件の検査を行っています。
食道静脈瘤破裂出血に対する緊急内視鏡止血術として静脈瘤結紮術 (EVL)や静脈瘤硬化療法(EIS)、消化性潰瘍出血(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)などについては緊急内視鏡下に局注、クリップ、最近では止血鉗子による凝固法によりほとんどの症例で止血が可能となり、きわめて良好な成績です。
リンパ節転移がないと考えられる早期の胃癌に対して当院では1992年に徳島県で初めて(四国内でも松山の四国がんセンターに次ぎ2施設目)胃ESDを導入し、さらに2005年に食道と大腸ESD(途中先進医療を経て)を導入してきました。令和4年末までには食道160件以上、胃1,500件以上、大腸550件以上のESDを行い、ESD総数は2,200件を超え、一括切除率は97%以上で一括完全切除とはっきり診断された場合再発は認めておらず、良好な成績を得ております。
全身麻酔下で消化器外科の腹腔鏡と消化器内科の内視鏡によるESDを組み合わせて行う合同手術で、従来の胃切除術より低侵襲な術式です。主として胃粘膜下腫瘍(間葉系腫瘍のGIST等)に対して令和4年末までに40例以上施行しております。
胆道、膵臓の疾患に対し、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)に引き続き、胆管・膵管ドレナージ、メタリックステント留置、胆管結石切石(切開術:EST、バルーン拡張術:EPBDやラージバルーン法)等の内視鏡治療を施行しています。重篤な胆道感染には緊急胆道ドレナージにて対応しています。さらに最近では胆膵領域の病変に対して超音波内視鏡検査(EUS)にて詳細な情報を収集可能となっており必要時には(針吸引細胞検査)FNAにて細胞や組織を採取することでより正確な病理組織学的診断をおこなっております。
C型慢性肝炎やC型代償性肝硬変は、内服薬のみのDAA 治療 (8-12週)で、ナイーブ症例(初めて治療を受ける方)に関しては、ほぼ前例治癒するようになりました。腹水が駐留したような非代償性肝硬変の方も、ウィルス駆除を行うことにより、肝予備能が改善することもわかってきました。
B型肝炎に関しては、整形外科や皮膚科の生物学製剤の治療が発達し、B型肝炎の再活性の問題あり、肝臓専門医のfollowが必要な症例が増えてきています。
肝臓癌の治療は、局所治療可能な肝細胞癌に対しては、経皮的ラジオ波焼灼療法で、根治ができるようになりましたが、進行肝癌に対しても、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬の進歩で長期予後が期待できるようになっています。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)の症例数は豊富であり、難治例では白血球除去療法、免疫調節剤療法(イムラン、プログラフ)、抗TNFα抗体療法(レミケード、ヒュミラ)などを積極的に行っています。イムランは白血球数をみながら至適容量を調節しています。プログラフの導入により短期的には8割前後で効果がありました。レミケードについてもクローン病では9割前後、潰瘍性大腸炎では5割前後で効果がありました。ステロイドホルモンはできる限り使用せず、長期の寛解維持を目指していきます。
(2023年5月現在)
ステロイドホルモンはできる限り使用せず、長期の寛解維持を目指していきます。