骨粗鬆症・骨折リエゾンサービス(FLS : Fracture Liaison Service)は、脆弱性骨折患者に対する骨粗鬆症治療開始率および治療継続率を上げるとともに、リハビリテーションの視点から転倒予防の実践により続発する骨折を防ぎ、骨折の連鎖を絶つことを目的としています。
脆弱性骨折は、骨の強度が低下し、わずかな外力で生じる骨折であり、高齢者の生活機能を一瞬にして奪い、生命予後の悪化をもたらす重大な疾患です。一度、脆弱性骨折を起こした場合の二次骨折リスクは極めて高くなるため、骨折治療を受けた患者さんに再発する骨折の予防は、本人のみならず、御家族、地域社会、さらには医療経済の面からも極めて重要なことです。
わが国で1,300万人にも達すると考えられている骨粗鬆症は、骨量の調節を司る女性ホルモンが減少する閉経後の女性に多い病気です。
また、循環器、呼吸器、自己免疫疾患など基礎疾患をもった方にも生じる病気です。男性も割合は低いですが、発症することがあり、決して人ごとではありません。
骨粗鬆症になると、股関節、背骨(せきつい)、手首、肩などの骨折を生じやすくなります(図3)。
なかでも、股関節骨折(大腿骨近位部骨折)は、手術を行っても、1年後の死亡率は約10%であり、受傷前の歩行レベルまで回復するのは64%とされています(図4、図5)。
これらの骨折の治療には、高額な介護費用と時間が必要になります(図6)。
骨折をしてしまうと、骨折前の生活に戻ることは難しいため、予防することが必要になります。また、骨折後に骨粗鬆症を治療しない場合は、他部位の骨折のリスクが上昇し、日々、機能障害や疼痛に悩まされることになります。
しかし、わが国の骨粗鬆症患者のうち、骨粗鬆症の治療を受けている割合は、20~30%と低いのが現状です。
これらの諸問題に対して、チームで対応するため、2022年4月に骨粗鬆症リエゾンチームが結成されました。
私達は、日常生活に制限のない期間「健康寿命」をより長くしたいと考えております。
骨粗鬆症リエゾンチームは、骨粗鬆症認定医、骨粗鬆症マネージャーを含む、各専門職19名で対応しています。
これまで、受傷から48時間以上かかっていた手術待機時間を、短くするように努めています。48時間以内に手術することにより、誤嚥性肺炎、心不全などの合併症を低下させることができます(喜多ら臨床整形外科2022)。
徳島県保健福祉部の調査によると、県内の緊急整復加算および挿入加算件数は、当院が第1位でした(75歳以上の患者が48時間以内に手術に至る場合に加算されます)。これは、近隣地域の高齢者の割合が高いとともに、地域の開業医の皆様、救急隊、救急科医師を含めたチーム医療の成果であると考えています。
初年度に比較して、股関節骨折(頚部骨折、転子部骨折)で、48時間以内の手術は増加しております(図9)。
受診時骨粗鬆症治療は約20%でしたが、サービスの介入により、70%以上の方が治療継続可能となり、脆弱性骨折の予防に繋がっていると考えられます。
受傷から48時間以内の手術ができるように継続し、より多くの患者さんやその御家族、そして、地域のかかりつけの先生に負担の少ない骨粗鬆症の診療、連携を目指してまいります。
ホームページを御覧頂き、ありがとうございます。
骨折後の患者さんが、受傷前に近い運動レベルを回復、維持するために、骨粗鬆症治療は重要です。女性に多いですが、基礎疾患をもった男性にも生じる病気です。退院してからも、当院や近隣の病院で治療が継続できるよう、徳島県西部医療圏から、現在FLSの環(わ)を広げていっております。
一度、お近くのかかりつけの先生に、御相談ください。
赤の点線が徳島県西部医療圏、○が三好病院のある場所です。
骨粗鬆症について、もっと詳しいことが知りたい方は、チームが作成したリーフレットを御覧ください。
骨粗鬆症リーフレット (PDF:2 MB)
入院中は、高度先進関節脊椎センターを含む病棟スタッフも、お手伝いさせていただきます。