専攻医1年目(令和2年度)
森川 史野先生
専攻医
ー 森川先生は初期臨床研修プログラムを終えて、専攻医として勤務する後期臨床研修プログラムに進まれているんですよね。
森川先生:はい。今は循環器内科に所属して、主治医という立場で患者さんとお話させていただいています。
ー 初期臨床研修プログラムの頃から徳島県立中央病院に勤務されていたのですか?
森川先生:そうですね。診療科の数が多いことももちろんですが、当院では三次救急の症例が多数搬送されること、研修医の頃からドクターヘリに乗ることもできる点に魅力を感じていました。初期臨床研修プログラム中に良い病院だなと感じたこともあり、基礎を学ばせてもらいながら実務経験も多く積むことができた徳島県立中央病院でそのまま勤務することを選びました。
ー 森川先生が医師を目指されたのにはきっかけがあったそうですが、うかがってもよろしいでしょうか。
森川先生:幼少期の頃に入院した経験があり、その頃から医療の現場に携わりたいなというぼんやりした気持ちはずっと持っていました。ただ、「医師」になろうと決めたのは、習い事の恩師が交通事故で突然亡くなってしまったことがきっかけです。命を救う医療という現場で、リーダーシップをとって直接命を救うことができるのはやはり医師なのかなと思い、目指したいなと考えるようになりました。
ー 実際に今「主治医」として患者さんを診る立場になって、感じることはありますか?
森川先生:患者さんやご家族とのコミュニケーションの難しさや、ガイドライン通りに治療ができないさまざまな合併疾患等がある方の治療方針の決定の難しさ、主治医の責任の大きさを日々痛感しています。初期研修の頃は指導医の先生の治療方針に従ってその場その場で「患者さんをどうよくしていくか」を考えることに精一杯でしたが、主治医となった今は患者さんの生活状況も含めたトータルで考えていく必要があると感じます。治療だけを考えるのではなく、患者さんご本人やそのご家族と直接相談をしあいながら、方針を伝え、調整しながら進めていく必要があります。
ー コミュニケーションという部分は、確かに主治医となると範囲が変わってくるところかもしれませんね。患者さんとのコミュニケーションで大切にされていることはありますか?
森川先生:初期研修の頃から、患者さんのもとへ足を運んでいかに話を引き出し、聞かせていただけるようになるかという点は大切にしていました。治療や症状に対する話だけではなく、テレビの話題やご家族のこと等、それ以外の話もしていただけるようになることがコミュニケーションとしては重要なのかなと思います。当時2〜3週間しか担当できなかった患者さんで、今も病院で会う度に声をかけてくださる方がいらっしゃるんですが、そういう風に接していただけるとやっぱりとても嬉しいですね。
ー 素敵なお話ですね。専攻医になられた今はどのようなことが「嬉しい」と感じますか?
森川先生:やっぱり、かなり厳しい状態だった方が自分で歩いて帰られる姿を見る時はとても嬉しいですし、そういった方が定期受診で来院された時に元気な姿を見たり近況を聞くことができたりすると「あぁ良かったな、嬉しいな」という気持ちになります。
ー 研修では色々な科を経験していくと思いますが、それぞれの場所で最大限の学びを得るために心がけたほうがいいことはありますか?
森川先生:それぞれの科において、頻繁に患者さんが訴える症状や多い症例というものがあると思います。それらを把握しながら、すぐに命に関わる疾患や合併症で出やすい疾患といった部分の対応をまず理解し、習得しておくことが大事ではないでしょうか。積極的に調べたり、先生方に「どうしてこの薬を使ったんですか?」と聞いてみたり、自らアクションを起こしていち早く習得し、その現場の戦力になれるよう努力することは大切だと思います。そうすることで手を動かせる機会も増えますし、必然的に経験も増えるので、意識されてみるといいことかもしれません。
ー 研修プログラム期間の中で、他に気をつけるべき点はあるでしょうか。
森川先生:初期臨床研修プログラムも、後期臨床研修プログラムも、どちらにも慣れるまではそれぞれの大変さがあると思います。私も「主治医」として診療をすることに慣れるまでは全てにおいてガイドラインを引いて調べて考えて……という感じだったので、とても時間がかかってしまって大変でした。ただ、そういった中でも自身の健康を保つことはとても大切なことです。「今日は少し早く帰れるかもしれない」という日には思い切って全てを置いて家に帰って休むようにしたり、半ば強制的に頭と体と心を休める時間は作るように心がけていました。
ー 疲れて判断能力が鈍ることは避けなければなりませんもんね。そうしたご自身のケアも含めて、医師として勤めていくために必要なことは何だと思われますか?
森川先生:医師という仕事は、自分の判断ひとつで患者さんの運命が大きく変わってしまうことがある職業です。判断ひとつひとつに迷うこともあって当然だと思います。だからこそ、研修プログラム参加中から「わからないことがある時に、一人で抱え込んで止まってしまわないこと」は大切にしてほしいなと思います。わからない、一人じゃ無理だと思ったらすぐに助けを求めるということは、私自身今でも大切にしています。
ー すぐに助けを求めるというのはなぜ重要なのでしょうか?
森川先生:医師にとって、時間はとても大切なものです。目の前で刻一刻と状態が変化する患者さんを治療するのに、処置に入るまでの無駄なタイムロスはなるべく減らす方がいいと思います。当院にも優秀な先生方はたくさんいらっしゃいますし、同じ科の上の先生にお願いしたり、プロフェッショナルの知恵や経験に頼るという判断をすることは必要な能力ではないでしょうか。
ー 徳島県立中央病院では、先生方のコミュニケーションも多いんでしょうか?
森川先生:そうですね。医局が統一されていることもあって、話をする機会はとても多いと思います。先生同士でも気軽に相談に乗ってくださったり、ICUの先生に相談をしに行きやすかったり、私もとても助けられています。医局でカルテを見ながら「すみません、これって……」と声を掛け合えたり、とても話しやすくて過ごしやすいなと思います。
ー 同期の皆さんとの関係はいかがでしょうか?
森川先生:とても仲が良いです。研修医の頃からお互いに悩みを打ち明けあったりして、今思えばメンタルサポートができる関係性があったんだなと感じます。今でも連絡をとりあったりして、近況や悩み事や知見は共有していたりしますね。
ー 良い関係性の中で働かれているんですね。森川先生は医師を「続けていく」ためには何が必要だと思われますか?
森川先生:そうですね……まずは「続ける」と言っても、いろいろな続け方があるんじゃないかなと思います。そうした「あり方」の最適解を見つけるというのもひとつの方法ですし、あとは何より自分自身の心身の健康を保つということは必須ではないでしょうか。自分自身に余裕がなくなってしまうと、健康な思考力がなくなってしまい、患者さんを思っての判断というものが難しくなっていくように思います。
ー なるほど。健康な思考力というのは良い言葉ですね。最後に医師という仕事の魅力と、これから研修先を選ぼうと迷われている方に向けたメッセージをお願いします。
森川先生:医師という仕事は、治療によって良くなっていく患者さんの姿を近く見られる貴重な職業です。ガイドライン通りの治療で回復される方、難しい治療で良くなっていく方、いろいろな姿を見ることができます。ただ、それをおこなっていくためにはコミュニケーションが必須です。すべての患者さんと良好なコミュニケーションがとれるわけではありませんし、理解が得られない時には何度も何度も根気よく説明をすることも必要になります。私自身、苦労することもありますが、「説明することから逃げない」ということは決めています。何を言われても誠意をもって説明すること。治療だけじゃなくコミュニケーションも難しい仕事ではありますが、その分やりがいもある仕事です。
大変だと想像されているかもしれませんし、実際に大変な部分もありますが、とてもやりがいのある仕事なので、興味があればぜひ当院の見学にも来てください。