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研修医インタビュー:武⽥直⼦ 先⽣

武田直子Dr

現場で知ったそれぞれの
リアルを胸に、
患者さんの生活背景までをも
想像して支えられる医師へ

研修医2年目(令和2年度)
武田 直子先生
臨床研修医

ー 武田先生は初期臨床研修プログラムの二年目ということですが、 どのようなプログラムなのか教えていただけますか?

武田先生:初期臨床研修プログラムの1年目では基礎を学びますが、2年目になると選択科と共に地域研修を経験することができます。地域研修というのは、徳島県立中央病院とは違う、地域の中にある他の病院に行って勤務をさせていただくという研修プログラムです。
徳島県立中央病院は医療の中枢を担う病院なので取り扱う科も多く重症の患者さんや救急の患者さんが多いですが、地域研修で行かせていただく病院はどこも地域に根ざした日常的なケアや医療をおこなっています。それぞれで求められることが異なり、学べることも異なるのでとても良い経験になっています。

ー 研修先の病院を選ぶ際に、徳島県立中央病院に決められた決め手を教えてください。

武田先生:私は香川出身で徳島大学に通っていて、四国で生まれ育ってきたこともあり、四国内の病院がいいなと考えていました。もともと精神科に興味があったのですが、研修先の病院に科がないと精神病院に行って研修をしなければならないということがわかりました。それはそれで学びがあるとは思うのですが、選んだ先の病院でそのまま学ぶことができ、入院している患者さんもいるという環境がいいなと感じたこと、身体的な症状や原因で入院されている方に精神疾患が見えた時の連携や、逆に精神疾患がベースにある方に身体疾患が出た時のケースなども経験していくことができること等を鑑みて、徳島県立中央病院に決めました。

武田先生インタビュー

ー 医師になりたいと考えるきっかけは何だったんでしょうか。

武田先生:もともとは、保健師をしていた母の姿がきっかけでした。小学生くらいの頃、母が保健師として子育て相談室でお母さん方の相談に乗っている姿を見て、「自分の専門知識をいかして誰かの役に立つ仕事」というのは素敵だなぁと思うようになりました。母のところにふらっと立ち寄ったお母さん方が、離乳食の相談なんかをして、笑顔になって帰っていく。その光景を覚えていて、心の支えになれるような仕事につきたいなぁと思うようになったんです。

ー なるほど。それで精神科に興味を持たれたんですね。カウンセラーや臨床心理士ではなく「医師」になろうと思ったのはなぜですか?

武田先生:高校生くらいになって進路を選ぶ時、「心のケアがメインの仕事って何だろう?」と考える中で、もちろんカウンセラーや臨床心理士という仕事も検討していました。さらに言えば高校の時の担任の先生が教員免許と臨床心理士の免許の二つを持っている方だったこともあって、医療現場ではなく別の方法でその知識を活かすということもできるのかと考えたりもしました。

ただ、医療も発達して良い薬がたくさんある中で、やはり投薬治療というのは治療の根幹になってくるのではないかと思ったんです。患者さんに対して、最終的に診断をして薬を出せるのは医師だけですから、それなら治療することにおいて一番主体的になれるのは医師なのではないかと思い、医師になる勉強をしようと決めました。

武田先生インタビュー2

初期臨床研修プログラムの1年目と2年目を通して見えてきた、医師として必要なこと。

ー 初期臨床研修の1年目と2年目、それぞれを経験してみてどうですか?

武田先生:1年目は本当に必死な毎日でしたが、二年目になって研修に対しては少しは慣れてきたかなという感覚です。1年目と同じく1ヶ月〜2ヶ月単位で科が変わっていくので緊張したりはしますが、当直や手術・手技については少しずつ経験を積んできたことで1年目よりは余裕があります。いろいろな科をまわる中で、今は産婦人科で手術にも入ったりしていますが、現場で手を動かすことに関しては今までの積み重ねが活かされているなと感じています。

武田先生インタビュー3

ー 研修プログラムを受ける中で、医師として必要なことにはどのようなことがあると感じられますか?

武田先生:医学的な知識だけでなく社会的なこと等も知って、他職種と連携することは必要だなと感じます。おそらくどの科にも言えることですが、疾患の状況や回復度というのは千差万別で、疾患の種類や進行度、個人差によって、回復しても元の生活には戻りきれないという方もいらっしゃったりします。二年目になって外来に入らせてもらったりもする中で、そういう方にとって、社会制度というものはすごく大切なフォローアップになると感じました。もちろんソーシャルワーカーさん等もいらっしゃいますが、そこにしっかりと繋ぐための判断をするのは医師ではないかと思います。何も知らないよりは、自分もある程度の知識を持って患者さんにも提示した上で、プロフェッショナルに繋いでいくということが必要だと思っています。

ー 今だと患者さんご自身が自分で調べることもできるかもしれませんが、それでも「医師から伝えること」に意義があると感じますか?

武田先生:はい。もちろん今は簡単に情報を調べられますが、それでもやっぱり主治医や医師から「こういった制度もありますよ」「活用されてみてもいいと思いますよ」「相談してみてくださいね」と言われると、患者さんは心が楽になったり、安心して支援を受けることができるのではないかと思います。地域研修でうかがった病院では、どこまでリハビリをして、どうやって家に帰るのかというところまで診る経験ができたのですが、やっぱり私たち医師の仕事は、ただ目の前の症状を治療するだけではなく、患者さんひとりひとりに合わせて「何ができるか」を考えていくことなんだなと思いました。まだ研修中なので実践の経験は少ないですが、これから先そうした経験値を積んでいく必要はあるなと思っています。

武田先生インタビュー4

思いやりを持つための余裕と、周囲へのリスペクトを忘れずに。

ー 医師として「大切にしていること」を教えてください。

武田先生:患者さんに思いやりを持つことと、ともに働くスタッフには尊敬をもって接することです。私たちは毎日患者さんと接しているので、忙しい時にはつい「慣れ」や「パターン」を感じてしまう瞬間があります。けれど、患者さんからすればたとえ研修医だったとしても立派な「お医者さん」ですし、ひとりひとり心のある人間ですから、不安も伝えたいこともたくさんあって当然だと思います。私たちは医師としてそれをしっかり受け止めて、生活背景までをも想像することが大切だと学びました。入院も救急もそれぞれに忙しいことは多いですが、どちらの場合でもなるべく心に余裕を持っておいて、患者さんの話にはしっかりと耳を傾けられる医師でありたいと思っています。

武田先生インタビュー5

ー 確かに、先生が忙しそうだと、つい遠慮してしまうという患者さんは多いかもしれません。

武田先生:そうですよね。私も患者さん側だったらそうだと思います。でも、何気ない会話が症状の変化に気づくきっかけになることもありますし、遠慮して何も言えない関係になるのは私たち医師側にとってもデメリットが多いと思うので、なるべく余裕と思いやりを保てるようにしたいなと思います。

ー 「ともに働くスタッフには尊敬をもって接すること」というのはどういうことでしょう?

武田先生:素晴らしい技術を持った尊敬できる先生方が多いということはもちろんですが、同期同士でも教えあったり支えあいながら仕事をすることが多いです。そもそも尊敬できる人ばかりが周りにいるということもありますが、それを当たり前と思わず、お互いに尊敬しあえる関係の中で仕事ができるように配慮は続けたいですね。

武田先生インタビュー6

相談しあえる環境で自分にとってベストな選択を。

ー 研修を受ける中で嬉しかったことや良かったなと思うことはありますか?

武田先生:実際に現場で様々な経験をすることで、視野が広がったということでしょうか。学生時代にもともと興味を持っていた科以外にもたくさんの科をまわれるので、実際に体験してみると内科にも興味があるかもしれないなとか、ここはちょっとイメージと違ったなとか、それぞれのリアルなところを体感することができるのは良いところだと思います。実際の現場で、専門知識のあるプロフェッショナル同士が連携して仕事をしている姿を見ると、自分自身の医師としての立ち位置というものも改めて考えさせられます。

武田先生インタビュー7

ー 逆に、研修の中で辛いと感じることはありますか?

武田先生:辛さを感じるというよりも、反省をすることは多いですね。2年目になって、1年目の経験も踏まえて「もっとこうできたんじゃないか」「もっとこうすればいいんじゃないか」といった振り返りをすることが増えました。ただ、反省できるということは気づけることが増えたということでもあるので、辛いというよりは少しは成長できているのかなと解釈するようにしています。

ー 徳島中央県立病院に勤務されている中で、悩みや不安が出てきた時にはどのように対処されていますか?

武田先生:当院は本当にみんな仲が良いというか、非常にアットホームな雰囲気のある病院です。先輩にあたる先生方も含めて相談しやすい雰囲気があるので、私もすぐに先生方に相談するようにしています。同期も仲が良いですし、看護師さんも親切な方ばかりで、わからないことがあるといつも笑顔で丁寧に教えていただいています。薬剤師さんからも改めて考えさせられるような問いを投げてもらえたりするので、悩みや不安も共有しながら勤務をしているような形です。

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ー 相談しやすい環境というのはとても大切ですね。今後はどのような科で勤務されていきたいと考えられていますか?

武田先生:内科や産婦人科など、本当にたくさんの科をまわる中で迷ったりもしましたが、やっぱり当初から志望していた精神科には携わり続けたいと考えています。他にも、当院の特徴でもある救急医療に関しても学びを深めていきたいです。

ー 研修先の病院を決めるのに迷われている方や、医師に憧れを持ちながらも迷われているという方もいると思います。一言メッセージをお願いします。

武田先生:医師を目指す人間にも本当に様々な人がいます。私のように親の姿に影響された人もいれば、ドラマを見て憧れたという人も最近は多いようです。医学部を目指す勉強も卒業後も大変なのは事実ですし、医師になってからがようやくスタートという仕事です。大変なことも多いですが、すごくやりがいのある仕事だとも思います。

色々な医師の姿がありますし、色々なやり方がある仕事なので、一口に「医師」と言っても、その中で自分の好きなことをとことん突き詰めていくことも可能な仕事です。私はこの病院に勤務できて本当に良かったと感じることが多いですが、人によって最適な環境は異なると思います。しっかりと考えて、自分の目で見極めた上で、たくさんの人に医療に携わってもらえたら嬉しいです。

武田先生インタビュー9