当院は2014年8月に手術用ロボット「ダ・ヴィンチSi」を導入、2020年12月から上位機種の「ダ・ヴィンチXi」を使用しております。
ダ・ヴィンチはアメリカで開発された内視鏡手術支援ロボットです。
外科医としての課題である正確な手術、身体への負担を減らすこと。
その飽くなき探求よりダ・ヴィンチがアメリカで開発され、ロボット支援手術は現在、全世界へ急速に普及しています。
~2022年11月、1,000症例を達成しました(自治体病院では県内初、四国で2番目)~
日本では2012年4月より、前立腺がんに対するロボット支援全摘除術が健康保険の適用となっています。
2016年4月から腎がん、2018年4月から膀胱がん、肺がん、直腸がん、子宮体がん等、
2020年4月から腎盂尿管吻合術(腎盂形成術を含む)、仙骨膣固定術等、
2022年4月から腎盂尿管がんに対する腎尿管全摘術等が保険適用となりました。
以降も適用手術の拡大が期待されます。
※閲覧注意:この映像には手術中の臓器なども含まれますので、閲覧には注意してください。
そのような映像が苦手な方はご覧にならないようにお願いします。
動画は、患者さんの許可を得た上で公開しています。
前立腺は、膀胱の尿を排泄する尿道を包むように存在し排尿をコントロールするのに
重要であると同時に、前立腺の外側を包むように勃起を起こす細かな神経の束が脊椎から陰茎へと走行しています。
このため前立腺がんに対して根治的な治療である摘出手術を行うと手術後に尿漏れや、勃起障害が生じることが問題でした。
ロボット支援膀胱全摘術は保険適応となる前の2017年9月に開始しました。そして保険適応となった2018年4月からは当科での膀胱全摘術はすべてロボット支援手術で行っています。
2018年の手術件数は23件と全国的にもトップレベルの手術件数を行いました。(2018年22例、2019年16例、20120年17例、2021年18例)。
2021年11月から2022年1月までの5例(女性3例、男性2例、全て体腔内回腸導管造設)の平均出血量は309.8ml、平均コンソール時間(ロボット使用時間)は315.2分です。膀胱全摘には尿路変更術が必要ですが、尿路変更術には尿管を直接皮膚にだす尿管皮膚瘻と回腸を使用しストーマを作成する回腸導管および回腸で袋状の新膀胱を作成する手術法があります。当科では初期から回腸導管の造設や新膀胱の造設術を「ダ・ヴィンチ」を使用し体腔内で行っています。手術時間は開腹手術と同程度まで短縮でき、出血量は開腹手術より大幅に少ないなど低侵襲な手術が可能になっています。
(井崎博文)
近年、健康診断や人間ドックなどで行われる CT 検査や超音波検査の進歩により偶然、腎腫瘍が発見されるケースが増えてきています。腎腫瘍は、悪性の可能性が疑われれば手術治療となりますが、以前は根治的腎摘除術(腫瘍がある腎臓を1個まるごと摘出する手術)が標準治療となっていました。しかしながら、ここ最近では4cm以下の小さな腎腫瘍であれば腫瘍部分のみを摘出する腎部分切除術が多く行われるようになってきました。
腎部分切除術は、手術後の腎機能温存において有用でさらに根治的腎摘除術と同等の制癌効果があることがわかっています。
また、腹腔鏡手術で行うため、開腹手術に比べて傷が小さく、手術後の痛みが少ないこともメリットの一つです。2016 年 4 月からは、ダヴィンチを用いた腹腔鏡下腎部分切除術が保険適応となりました。また、当院では術前に画像解析システムを用いて腫瘍のある腎臓の3D 画像を作成し手術に役立てています。
このような手術支援ロボットや画像解析システムの進歩により、徳島県立中央病院では 7 cm以下の腎腫瘍の患者さんに対しては積極的にダヴィンチ手術によるロボット補助下腎部分切除術を検討しています。従来では腫瘍が大きく腹腔鏡による腎部分切除術が不可能と言われていた症例でも、今後はダヴィンチにより腎部分切除術が施行できる可能性もあります。何かご不明な点などがございましたら、お問い合わせください。
(塩崎啓登)
ダ・ヴィンチ手術で前立腺を摘出した患者さんにインタビューに応じていただきました。
前立腺がん 71歳 男性
私は、62歳のとき脳梗塞を患いました。軽度で済みましたが、医師からはメタボ宣告を受け、それを機に、夫婦でランニングを始めました。
健診でPSA(腫瘍マーカー)値が高いことが分かりました。自覚症状は一切なく、どうしたものかと悩んでいたところ、趣味のマラソンの仲間でもある中央病院井﨑先生に相談すると「私が診ます」の一言。迷うことなく「おまかせします」と返事して、中央病院泌尿器科に通うことになりました。
超音波とPSA検査を行い平成27年3月前立腺生検施行。前立腺癌の診断を受けました。骨シンチとCT検査を受け癌が前立腺に限局しているとのことで、井﨑先生と話し合って治療方法をダヴィンチ手術に決めました。
H27年5月手術前日に入院、手術は麻酔によりあっと言う間、「終わりましたよ」の声で目がさめました。家内は摘出した前立腺とリンパ節を見せてもらい、ロボットを操縦していた時間は1時間43分、出血も少なく輸血もしなかったと説明を受けたようです。
手術の次の日昼から歩行練習。スロージョギングならできそうな気分でした。1週間後に退院。幸い尿失禁は全く認めませんでした。術後1カ月の診察。医師から「軽いランニングならOK」との許しがでたので、徳島中央公園6kmランから始めました。秋にハーフマラソンを走り術後1年でプラハマラソン(5月8日)に挑戦、無事ゴールできました。
手術の印象は、手術翌日から歩きだし、退院してすぐ仕事にかかれました。手術ってこんなに軽いものか、という印象。身内に開腹手術した人がいて、術後が辛そうだったので、それと比較して回復の早さに驚いています。ダヴィンチという最新医療と専門医師に出会えて、本当に運が良かった、と感謝しています。
当院ではメディカルスタッフ(医療専門職)が連携して、
それぞれの専門スキルを発揮することで、的確かつ安全な医療を提供しています。
2014年10月に開始した手術支援ロボット『ダ・ヴィンチ』による前立腺全摘術は2021年11月に500例を超えました。ダ・ヴィンチSiで開始しましたが、2020年12月からは上位機種であるダ・ヴィンチXiになりました。時間は2~3時間程で合併症もほとんどなく安全に行うことができています。入院期間は7日間程です。尚、欧米においては前立腺癌に対する根治的前立腺全摘除術の80%以上がダ・ビンチサージカルシステムなどを使用したロボット支援手術にて行われており、世界的には標準的な手術方法となっています。
腎細胞がんに対するロボット支援腎部分切除術は、保険適用となった2016年4月から開始しました。腹腔鏡手術に比べ複雑で細かな手術手技が可能となり、現在90例ほど合併症なく施行できています。
ロボット支援膀胱全摘術は保険適応となる前の2017年9月から開始しました。開腹手術に比べ侵襲も少なく開腹手術では困難と考えられていた患者さんにも安全に行うことができるようになっており、全国屈指の症例数(2018年22例、2019年16例、2020年17例、2021年18例)を誇ります。2021年11月から2022年1月までの5例(女性3例、男性2例、全て体腔内回腸導管造設)の平均出血量は309.8ml、平均コンソール時間(ロボット使用時間)は315.2分です。
腎盂尿管移行部狭窄症に対するロボット支援腎盂形成術は2018年4月から開始しています。繊細なロボットアームを使用した狭窄部の切除と細かな縫合ができるため、手術成績の向上と手術時間の短縮がみられます。令和3年12月までに13例施行しています。
当院では「ダ・ヴィンチ」手術において泌尿器科医、麻酔科医、看護師、臨床工学士等でチームを結成し、相補的な連携のもと、安全を重視したチーム医療による手術を行っています。患者さんにとってより安全で侵襲が少なく、機能温存を目指した手術を追及していきたいと考えております。