こちらでは、研修医が行った研修の様子を紹介しています。
研修医 令和5年9月27日
令和5年9月27日、研修伝達報告会を行いました。
当院は、徳島大学病院や徳島県立中央病院、徳島県鳴門病院の協力型病院となっており、毎月2~4名の研修医を受け入れています。研修内容としては、外来診療や救急での対応、病棟管理のほか、デイケアやカンファレンスへの参加、へき地診療所での応援診療などがあります。
研修伝達報告会では、研修医が当院で行った研修の内容や症例について発表を行い、医師だけでなく多職種の職員が参加し、発表に耳を傾けます。
今回は、県立中央病院の研修医2名が発表を行いました。急性硬膜下血腫によって脳幹が著明に圧排されていたため、高度医療機関と迅速に連携を図り、一命をとりとめた症例と、認知症がある高齢者で尿路感染症を繰り返している症例について報告がありました。また、西祖谷山診療所の研修で学んだことや印象に残ったことについても発表がありました。研修では、地域の医療機関の状況や患者さんのご家族のことを考慮しながら診療を行ったり患者の転院搬送の判断を行ったりと、地域医療ならではの経験もされたことと思います。
研修はまだまだ続きますが、当院での経験や学びを少しでも役立てていただければ嬉しく思います。
令和5年8月22日、臨床研修修了式が執り行われました。
この日は、研修課程を修了した別宮先生の門出を祝うため、多くの職員が駆けつけました。
初めに、臨床研修管理委員長の蔭山先生から別宮先生へ修了証の授与が行われました。その後、蔭山先生と藤永先生からはなむけの言葉が贈られました。
最後に、別宮先生から研修の感想や今後の目標をお話していただきました。選択科目の多くを救急科で研修された先生は、「三好病院の研修では、軽症例から重症例まで幅広く学ぶことができました。今後は、地域に貢献できるような立派な医師になりたいと思います。」とおっしゃっていました。海部病院や半田病院、木屋平診療所でも研修を行い、患者さんの病状だけでなく、地域の環境や患者さんの背景も考慮して診ることの難しさも感じられたようです。
別宮先生は、真面目で優しい性格で、患者さんにも周りのスタッフにもいつも丁寧な姿勢で接していたのが印象的です。これからの医師人生、先生らしく歩んでいってください。また、三好病院にも遊びにきてくださいね!
令和3年3月24日、臨床研修修了式が執り行われました。
当院で初めての臨床研修修了式です。令和2年度をもって2年間の研修課程を修了した阿部先生の門出を祝うため、式には多くの職員が駆けつけました。
修了式の前半では、阿部先生から2年間の研修について総括が行われました。
阿部先生「研修の中で、指導医の先生方から数々の心に残る言葉をいただきました。『自分の見た患者さんを、医者は必ず次につなげないといかん。』これは、住友院長からの言葉です。研修すればするほど、この言葉の大切さと難しさを感じる機会が度々ありました。
救急外来では、軽症の人から重症の人まで診察し、処置が必要か、帰宅か、入院か判断を求められます。重症度、緊急性の程度はどのくらいか?自分の手に負えるか?自分で無理なら誰に、どの科に相談するべきか?目の前の患者さんには、生活があります。患者さんが今どんな環境に置かれ、これからどうなっていくのかを想像し、適切に判断する必要があります。今後は、患者さんの重症度、緊急性を認識し、適切な判断ができる医師を目指していこうと思います。」
研修中の思い出なども交えながら、様々な環境で経験し、学んだことについて報告していただきました。
続いて、住友院長から阿部先生にはなむけの言葉が贈られ、修了証書の授与が行われました。
院内の職員からは「あべちゃん」と呼ばれ、慕われていた阿部先生。
集まった多くの職員からも、激励の言葉や感謝のメッセージを贈られていました。
住友院長が「どこの病院にも堂々と送り出せる医師に育ってくれた」と話していたように、2年間本当に努力され、医師として立派に成長されました。
先生は当院初の臨床研修医として、自慢の医師です。寂しくなりますが、次のステージでも先生らしく、貪欲に学ぶ姿勢で頑張ってください!三好の地からいつまでも応援しています。
令和5年7月10日から7月16日まで、研修医(当時)の別宮先生が木屋平診療所で研修を行いました。
木屋平診療所は、標高約330mの中山間地域にあり、地域面積の95%が林野、地域外につながるのは2本の山道のみという地理的に周辺地域から孤立した場所にある診療所です。木屋平診療所のある美馬市木屋平は、地域人口456名、65歳以上の人口が全体の68.2%を占める高齢者の多い地域でもあります。また、木屋平診療所は、平成30年3月に旧・木屋平中学校を改修して開設された木屋平複合施設に増設されました。木屋平複合施設には、木屋平診療所の他に、木屋平サービスセンターや郵便局、薬局、歯科診療所などが含まれ、定期的に訪問販売やJA金融社が来る場所にもなっています。
藤原院長先生と看護師3人で運営されており、研修医を温かく迎えていただきました。
研修では、在宅医療や訪問服薬指導に同行させていただきました。また、健康教室の講義を担当する機会もありました。研修を通して、地域をよく知り、普段から地域住民と関わることの重要性を実感しました。
令和2年12月から令和3年2月まで、長野県茅野市の組合立諏訪中央病院で3ヶ月間研修を行った研修医(当時)の阿部先生にインタビューを行いました。
三好から遠く離れた地で、どんな経験をされたのでしょうか。
諏訪中央病院は、当院と同じように中山間地域の中規模急性期病院として、「あたたかな急性期医療」を提供しています。また、全国的にも早くから在宅医療や、緩和医療、疾病予防にも取り組まれており、地域密着型の医療がなされています。
当院の初期臨床研修プログラムでは、選択科目として同院の総合診療科で研修を行うことができます。
当院のプログラムにおける諏訪中央病院での研修は、次のような目標が設けられています。
患者を単なる疾患の複合体としてではなく、疾患とともに悩み苦しむ人としてとらえ、患者とともに常に考える主治医としての役割を担えるようになるために、内科学一般および生物社会医学モデルを理解し、一般内科医としての基本的臨床能力を身につける。
それでは、阿部先生に話を聞いてみましょう。
雪が多く、生活に困ることを予想していましたが、12月~2月の間に雪が降ったのは5日程度で、スタッドレスタイヤにしておけば、雪道を車で走るのに困ることもありませんでした。車で5分程度で市街地に出られるので、日常生活で困ることもありませんでしたが、平均気温は3度程度で、やはり徳島より寒さは感じました。
諏訪中央病院は病床数360床と中規模な病院ですが、医師数が100人、私が研修した総合診療科だけでも20人程度の医師が在籍していました。教育病院としての評判が高く、後期研修(3~5年目)の先生が多いことが理由に挙げられます。三好病院が220床で医師数が約30人、その前に研修させていただいた徳島県立中央病院でも460床で約80人であることを考えると、かなり多いことがわかります。
通常の研修以外に、昼休みは学生や研修医向けに問診や身体診察から鑑別を考える「昼カンファ」が毎日ありました。月曜は対応に困っている患者さんを相談できる「内科カンファ」、水曜は全科の先生が集まる「医局勉強会」や脳梗塞の対応について相談できる「脳卒中カンファ」、金曜は「総合診療科勉強会」などがあり、様々な集まりで互いの経験を共有したり、困ったときに相談したりできる環境がそろっていました。
諏訪中央病院の総合診療科は、1チーム4~5人のチームに別れており、全部で3チームありました。リーダーの指導医、後期研修医の医師、研修医がいるのが基本です。それに加えて、私が所属したチームを含めた2チームは神経内科の医師が一人ずつ所属していました。
研修内容としては、主治医として患者さんを担当させてもらい、毎朝8時頃に指導医と方針の確認と診察、検査のスケジュールを確認します。状態の悪くなった人や、一人で判断がつかない患者さんがいれば指導医に自分の診察、検査結果を踏まえた考察を伝え対応を相談します。自分の評価に不安があるときは指導医に診察の同行を依頼し、どう対応すべきか指導していただいたり、ご家族へ連絡するときや治療方針を病棟の看護師さんに伝えるときに、どんなことを伝えるべきかについても指導していただいたりしました。夕方には日中オーダーした検査結果やリハビリ・家族や施設の受け入れ状況を踏まえ、明日の予定や退院のために必要なことを指導医と相談しました。
研修医1年目の11月、12月に三好病院の総合診療科で研修したときは、右も左も分からず、主治医の先生の他に教育担当の先生がいて、診察や+αでできることをメインに考えていました。研修の中で、少しずつですが、地域ならではの特殊な療養環境や、時間軸に沿って患者さんの変化に注目することを学び、全人的に患者さんを診る基礎を築くことができました。
諏訪中央病院では3ヶ月の研修で30人もの患者さんを担当し、毎日の輸液決め、内服処方の確認、患者さんとの治療についての面談、時には施設の受け入れ条件と病棟での状況の確認などを行いました。より実践的に、入院から退院までに必要な多くのことについて学ぶことができました。
病棟では、まともに入院管理をした経験がなく、担当の看護師さんが誰か分からなかったり、コンサルトするのにどうしたらいいか分からなかったりと、最初の1ヶ月間は病棟業務をスムーズに進めることに苦労しました。2ヶ月目からはある程度動き方が分かり、業務にも慣れていきました。
また諏訪中央病院には研修医部屋があり、そこで研修医同士で自由に話ができました。諏訪中央病院の研修医の人数は1学年5人の合計10人です。教育で有名な病院らしく、全国の大学から研修に集まっており、私と同じように3ヶ月程度研修に来ている研修医もいました。臨床経験年数に関係なく、私より圧倒的に知識があると思うような人や、最新の論文などから知識を蓄え、様々なことを教えてくれた人、救急や他病院の研修で経験したことを共有してくれた人もいました。しんどいときに周りの研修医と相談したり、励まし合ったりする環境があったので、最後まで研修をやり切れたのは、諏訪中央病院にいた研修医の皆さんのおかげだと思っています。
馬肉やうなぎで有名なところが多く、おいしいところを同期や先輩医師に教えてもらいました。新型コロナウイルスの流行もあり行動に制限はありましたが、総合診療科は当番制で待機をしており、休日のオーダーなど待機の医師で対応が必要なことはしてもらえる体制なので、休日はしっかりと羽を伸ばすことができました。
大きく分けると2つあります。
まず、患者さんの問診・身体診察を終えた時点での鑑別の数です。これまで、急性期の鑑別については、いかに除外するかにこだわって学び、落とさないように気をつけてきたつもりですが、それらを除外できたとして「なら今この患者さんの診断は?」とその後から考えるような習慣がついてしまっていることに気づかされました。診察をすすめながら、よくある疾患も考慮に入れた上で、検査していきたいと思うようになりました。
次に、MSW(医療ソーシャルワーカー)の仕事の大切さです。MSWの方が、患者さんが退院後に生活できるように様々なことを調整してくれているのは知っていましたが、主治医として「この患者さんが、退院後にどうやって生活していけばいいのだろう」という視点で考えると、改めて自分ではこの患者さんをどう退院までもっていくか、退院後の医療や介護サービスは何かなど、知らないことがたくさんあり、その都度MSWの方に助けていただきました。
これらのことを踏まえ、今後は問診・身体診察で「よくある疾患」も想起した上で、診断や除外をできる。そして、診察後には訪問診療やデイサービスなど適切な医療や介護のサービスが提供されているか確認し、問題があるときには病院をあげて対応を考えていける。そういった医師になることを目標に研鑽を続けていきます。
2年次から、様々な病院で研修を行ってきた阿部先生。多くの貴重な経験を積み、非常に頼もしく感じました。中でも、地域密着型の先進的な医療が行われている諏訪中央病院での研修は、「病を通して生を診る」ことを肌で感じ、地域医療について深く学ぶことができたと思います。今後の阿部先生の活躍に期待しています!
さて、今回は最近感染者が増加している「新型コロナウイルス感染症」について、学生・研修医を交えて抄読会を行いました。その抄読会の様子についてご紹介します。
A「それでは、抄読会を始めます。今日は、学生のB君も参加されます。」
B「よろしくお願いします。」
A「そういえばC君、旅行はどうだったの?」
C「COVID-19で出口検査がたいへんでした。」
D「でも、罹らなくってよかったね。」
C「行きの飛行機の中で、頂いたNEJMのアメリカのケースを読んでいました。」
A「じゃあ、潜伏期とか症状を考えながら行ってきたんだ。」
C「はい。症状と検査の時系列の図表がとても勉強になりました。」
A「そうですか。この論文(文献1)には、病日ごとの症状と、各時期・検体の real-time RT-PCP の結果が掲載されています。こうした臨床像は、大変参考になりますね。」
B「発熱、咳嗽、倦怠感の他に、嘔吐とか下痢ってありますよね。消化器症状って多いのですか?」
A「別のLancetの報告(文献2,3)では、2~4%になっています。しかし、このアメリカの報告でも stoolからの RT-PCRは陽性のようなので、感染予防の上から要注意ですね。」
B「手洗いですね。」
D「感冒としてのコロナウイルス感染や、SARS、MARSでも消化管症状はありますし、RT-PCRで検出されていますね。(文献4)」
A「あ、D先生、隠れて勉強していますね。」
D「ばれましたか(笑)。ところで、まだ広がるのでしょうか?」
A「LancetにCOVID-19の拡散について現状と今後の予想もされており、個人レベルの衛生が最重視されています。(文献5,6)また、こうした文献は現在、Free textで閲覧ないしダウンロードできますから、とてもありがたいですね。ところで、初期段階の検出も大切なので、スクリーニング目的にこんな簡易問診票(下図)を作ってみました。どうでしょう?」
D「なるほど。NEJMやLancetの報告から選んだのですか?感度は良さそうに思います。」
C「ふむ。じゃあ、特異度が問題ですね。」
A「そうですね。B君、特異度って何でしたっけ?」
B「え~っと、陰性を陰性と診断できることでしたか?」
A「いいですねぇ。今、評価を点数化していますので、次回はその辺りも勉強することにしましょう。では、D先生が珈琲を淹れてくれましたので、みんなでC君のお土産を頂くことにしましょう。」
【参考文献】
Table2.(Holshue ML et al.NEJM Jan.31,2020)
2019年8月から10月の3ヵ月間、三好病院の救急科で研修をさせてもらいました。救急科での研修では、患者さんへの問診はもちろんのこと、必要な検査は何か?患者さんが帰っても大丈夫なのか?他科への紹介が必要なのか?今すぐ必要な処置はないのか?など、多くの決断を迫られました。
初めのうちは、よく分からないことが多かったのですが、上級医、看護師、検査技師などの多くの方から教えてもらえる環境だったので、非常に研修がしやすかったです。
その反面、自分が他科の先生に患者さんへ何をしてほしいのかよく考えていなくても、各科の先生にフォローしていただける環境だったので、そこに甘えてしまうところもありました。
「いったい、この患者さんに何をしてほしいのか。」
基本的に他科に患者さんを紹介するときは、これを自分の中で決め、各科の先生にお願いすることになります。これを決めるには、疾患の知識が必要です。しかし、それだけではなく、その患者さんが、「どんな場所に、誰と住んでいて、帰宅して後日に外来を受診してもらえば大丈夫なのか、入院して様子を見た方がいいのか」まで考える必要があります。
上級医の先生から
「その患者さんの起承転結の”結”を考えなさい」
と教えていただきました。
調子が悪くなる何かの症状があって、病院に来て、診察をして、検査を受けて、その患者さんがどのようになっていくのか。これを考えておけば、他科へ紹介し、その患者さんが困っていることに対応していくことができます。病気を治すための緊急の対処の仕方など他にも本当に多くのことを学ばせてもらいましたが、その患者さんの今後を考えて、次の行動を行うことは、これから他科での研修でも意識してやっていきたいと思いました。